アーティスト特集~フランチェスコ・コルティ~『J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲第3集』

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『J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲集第3集』

J.S.バッハ:
①2台のチェンバロのための協奏曲第3番 ハ短調 BWV1062
②2台のチェンバロのための協奏曲第2番 ハ長調 BWV1061
③チェンバロ、オーボエと弦楽のための協奏曲 ニ短調 BWV1059(フランチェスコ・コルティによる再構成版)
④2台のチェンバロのための協奏曲第1番 ハ短調 BWV1060

フランチェスコ・コルティ(チェンバロ独奏:BWV1059、第1チェンバロ:BWV1060-1062)
①②④アンドレア・ブッカレッラ(第2チェンバロ)
③エマニュエル・ラポルト(オーボエ)

イル・ポモ・ドーロ
ヴァイオリン1:エフゲニー・スヴィリドフ
ヴァイオリン2:アンナ・ドミトリエヴァ
ヴィオラ:ステファノ・マルコッキ
チェロ:キャサリン・ジョーンズ
ヴィオローネ:パオロ・ズッケリ
セッション録音:2021年4月17-21日/ヴィッラ・サン・フェルモ、ロニゴ(イタリア)

PENTATONE KKC6549
輸入盤国内仕様

 第1集、第2集ともにレコード芸術特選を獲得し、日本でも数多くのファンを獲得した天才チェンバロ奏者フランチェスコ・コルティとイル・ポモ・ドーロによるバッハのチェンバロ協奏曲集の第3弾。今作もレコード芸術特選を獲得しました。この第3弾では、2台のチェンバロのための協奏曲3曲と、コルティ自身が再構成した冒頭9小節のみ残されたチェンバロ協奏曲BWV1059を収録しています。2台のチェンバロのための協奏曲でコルティの相方を務めるのは、コルティと同年代のイタリア人チェンバロ奏者アンドレア・ブッカレッラ。すでに自らのアンサンブルを主宰して、声楽作品の録音やソロ・アルバムもリリースし、高く評価されている実力派です。 第3番BWV1062は、有名な「2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV1043」の編曲。どうしてもヴァイオリン版のイメージが強く、このチェンバロ版は、所詮、編曲作品とされてしまうことが多いのですが、この録音を聴けばそんな印象は吹き飛ぶでしょう。原曲さえも飲み込んでしまうほどの圧倒的な主張と説得力。コルティとブッカレッラの即興性に満ちた丁々発止の掛け合い、各パート一人の弦楽合奏と通奏低音の絶妙の合いの手。聴けば聴くほど、これこそがオリジナルなのではないかと思えてしまうすごさなのです。緩徐楽章のチェンバロ同士による濃厚な対話も聴きごたえ十分。第3楽章の圧倒的な推進力はただ茫然と聴き入る他ないでしょう。特に即興性豊かながらも微妙な演奏の“間”を全奏者が把握し、一致した解釈ができていることは驚愕に値します。
 第2番BWV1061は、原曲が、弦楽合奏と通奏低音のない2台のチェンバロのみの二重奏曲(BWV1062a)だとされている作品。ツィンマーマンのコーヒー店での演奏曲目として弦楽合奏が加えられたのではないかということです。解説ではヴィルヘルム・フリーデマンの手による付加ではないかと説にも触れていますが、確かに弦楽合奏は、あくまで添え物的な付加で、2台のチェンバロが存分にフィーチャーされている協奏曲と言えます。ここでもコルティとブッカレッラの互いを刺激し合う即興的な演奏が圧巻ですが、全パートを巻き込むフーガ展開の際は、弦楽器も「我が意を得たり」と主張し、堂々たるフーガを構成しています。こうした阿吽の呼吸がコルティと仲間たちにはあるのです!
 BWV1059は、バッハが残した1台のチェンバロ協奏曲集の楽譜集に、なぜか冒頭9小節のみが残されている謎の作品。この9小節は、カンタータ第35番の冒頭の合奏曲が基となっているのは確実で、ここからBWV35のカンタータ全体から素材を選び復元や再構成することが一般的となっています。ここでもコルティはさまざまな検討を重ねた上で、BWV35の合奏曲とアリアから協奏曲を復元しています。復元というよりもより創造的な作業、いわゆる再構成となっていることは、コルティ自身によるかなり長めの解説に詳しいのでぜひ解説をご覧ください。演奏を聴くにあたって必読です。コルティは1台のチェンバロと1本のオーボエ、弦楽合奏と通奏低音の協奏曲として再構成していて、オーボエの活躍も聴き逃せません。現代におけるバロック・オーボエの名手ラポルトの演奏が卓越しています。コルティのチェンバロはオーボエとの親密な対話を続けながらも、即興性を維持し、かなりの速いテンポ設定で曲全体を駆け巡ります。復元・再構成したという作品というよりも、まさにオリジナル作品としてこの協奏曲を新鮮に聴かせてくれるのです。
 第1番BWV1060は、現在ではオーボエとヴァイオリンの二重協奏曲として演奏されることの多い協奏曲で、第1楽章は冒頭のほんの小さなモチーフがさまざまに展開されていくバッハの作曲手腕がふんだんに生かされた音楽となっています。この辺りも解説書に詳しいのでご参照のこと。こうした構造を知ってから聴くとこの作品がより楽しめること請け合い。ここでもオーボエとヴァイオリンのイメージが強いこの作品を、見事にチェンバロ協奏曲として説得力を持たせているコルティとブッカレッラ、そして合奏奏者たちの生気あふれる演奏が圧巻です。彼らのすごさは、原曲が存在する、いわばバッハによる編曲作品を、まさに今生まれたばかりのオリジナル作品のように、実に新鮮に聴かせてくれるところでしょう。即興性に満ち、大胆な解釈やテンポ設定もありながら、細かい部分での統一感まで図られています。彼らはいったいどれだけこの録音に力を注いできたのでしょうか。その意気込みには脱帽するほかありません。
 この演奏を通じて、バッハの作品の中でもいまいち評価されにくい2台のチェンバロ協奏曲とBWV1059のすばらしさをぜひ多くの方に知っていただきたいものです。

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