必聴傾聴盤紹介~「ヘンデル:主は言われた、主が家を建てられるのであれば、主を讃美せよ/ジャスティン・ドイル指揮RIAS室内合唱団」

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『ヘンデル:主は言われた、主が家を建てられるのであれば、主を讃美せよ』
ジャスティン・ドイル指揮

RIAS室内合唱団、ベルリン古楽アカデミー(Akamus)
harmonia mundi
CD HMM902723 輸入盤 
2024年4月中旬発売予定

収録情報

ヘンデル(1685-1759):
・主は言われた(Dixit Dominus) HWV 232
・主が家を建てられるのであれば(Nisi Dominus)HWV 238
・主を讃美せよ(Laudate pueri) HWV 237

ジャステイン・ドイル(指揮)、RIAS室内合唱団、ベルリン古楽アカデミー
ソプラノ|キャロリン・サンプソン、ヨハンナ・ヴィンケル、ヴィクトリア・ウィルソン
アルト|アレックス・ポッター
テノール|ヒューゴー・ハイマス
バス|アンドレアス・ヴォルフ

録音:2022年8月、2023年9月

★1707年、若きヘンデルが作曲した宗教作品3つを収録。器楽の扱いの充実、対位法の素晴らしい熟練、そしてテキストの内容をやわらかに膨らませ音楽化することの天才性が遺憾なく発揮されています。ヘンデルが生まれ故郷のハレを発ってハンブルクに向かったのが1703年、18歳の時のことでした。ハンブルクの後、イタリアに向かい、1706 年末か1707 年初頭から1710 年まで、ローマを中心としたエリアで仕事をします。ここに収録の3 作品は1707 年7 月16 日のカルメル山の聖母の祝日のための一連の礼拝のために、ということでラテン語のテキストの宗教作品を依頼され生まれたものです。どの作品もあざやかなコントラストに満ち、また、独唱の楽曲も器楽の組み合わせも様々。2017年よりRIAS室内合唱団の芸術監督および首席指揮者に就任したジャスティン・ドイルとRIASの息もますますピッタリ、ベルリン古楽アカデミーの器楽も冴えに冴えた、ヘンデルの魅力満載の名演が誕生しました。
キングインターナショナル

 1975年イギリス生まれで、ウェストミンスター寺院合唱団やケンブリッジ・キングズ・カレッジ合唱団の合唱団員を経て、合唱指揮者となり、2017/18シーズンよりRIAS室内合唱団の首席指揮者を務めるジャスティン・ドイルが、RIAS室内合唱団とベルリン古楽アカデミーとともにおくるharmonia mundiレーベルでのヘンデル録音シリーズ第2弾(第1弾は戴冠式アンセム集 HMM-902708 またPENTATONEには「メサイア」の録音もあり)。
 18歳で故郷ハレからハンブルクに移り、ヴァイオリニスト、作曲家として活動していたヘンデルは、1706年終わりか1707年の初めにイタリアに移り、主にローマ近辺で活動するようになります。そのころ、ローマのカルメル会と関係の深かったコロンナ枢機卿より、サンタ・マリア・ディ・モンテサント教会での「カルメル山の聖母の祝日」の礼拝のために、旧約聖書の「詩篇」をテキストとした楽曲の依頼を受けます。そうして作曲された楽曲が、このアルバムに収録された「主は言われた(Dixit Dominus) HWV 232」
「主が家を建てられるのであれば(Nisi Dominus)HWV 238」「主を讃美せよ(Laudate pueri) HWV 237」です。特に5人の独唱者と5声部の合唱、2つのヴァイオリン・パートと1つのヴィオラ・パート、通奏低音という編成の「主は言われた」は、現代でも人気の高い楽曲で、録音数もかなりの数になります。20代前半のヘンデルの「これからのし上がってやろう」という強烈な自我と野心が込められたような劇的な作品で、冒頭の弦楽器によるパワフルなアルペジオから、音楽を前へ前へと推進させます。劇的な和音進行、推進力を生む緊密な対位法、各楽章での個性を際立たせた描き分けなど、若きヘンデルのその時点での作曲技法の粋が込められています。畳みかけるように盛り上がる最後のアーメン・フーガは圧巻です。「主が家を建てられるのであれば」は、まるで合奏協奏曲の形式のようなコンチェルティーノとリピエーノを持つ二重合唱が特徴的。ソプラノ独唱や2本のオーボエを伴う「主を讃美せよ」ともども、若きヘンデルの作曲技法が堪能できる楽曲です。
 ジャスティン・ドイル率いるRIAS室内合唱団は35人以上で、迫力ある歌唱でこの劇的な3つの作品を表現します。独唱陣もキャロリン・サンプソン、アレックス・ポッター、アンドレアス・ヴォルフら実力派歌手ばかりで、独唱部分を彩ります。ベルリン古楽アカデミーも時に声楽陣を煽るような切れ味鋭い演奏(「主は言われた」の冒頭(トラック1)、Dominus a dextris tuis(トラック6)など)で音楽の推進力をより高めています。若き日のヘンデルの才能が炸裂する楽曲と演奏を存分にお楽しみください!(須田)

ちなみに

・このアルバムでベルリン古楽アカデミーのコンサートマスターを務めているのは、アイスランド出身でドイツを中心に活躍する、エルファ・ルン・クリスティンスドゥッティル。彼女は、2006年のライプツィヒ国際バッハ・コンクールのヴァイオリン部門で優勝した逸材。ライナー・クスマウルに師事し、モダン楽器だけでなく、ピリオド楽器も弾きこなす実力者です。ちなみに、2006年のライプツィヒ国際バッハ・コンクールの入賞者は、チェンバロ部門の第1位がフランチェスコ・コルティ、第3位がフランソワ・ゲリエ、ヴァイオリン部門の第2位が平崎真弓、第3位がドミトリー・シンコフスキーと、その後、ヨーロッパの古楽シーンで大活躍する逸材ばかりで驚きます。平崎真弓もベルリン古楽アカデミーのコンサートマスターを務めていますし、ベルリン古楽アカデミーは実力派の抜擢が目立ちますね。

ジャスティン・ドイル&RIAS室内合唱団のヘンデル第1弾 好評発売中

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