~「聴くこと」と「聴こえること」の間にゆらめく仄かな、しかし確かなる音~
「Music Documents」をはじめとするコンサート企画や、“nothing but music”ディレクターとしても知られる作曲家・伊藤祐二の、待ち望まれていた作品集。ピアノ・ソロを中心に、キャリア最初期に書かれた《振り返り I》(ヴァイオリンとピアノ)、ルーマニア語の俳句をテクストとする《ヴァシレ・モルドヴァンの7つの詩》(ソプラノとピアノ)を含む5曲すべてが初録音。「関係性の中から、それら一つ一つの音を聴き出すこと」を一貫して志向する伊藤の音楽は、「聴くこと」と「聴こえること」の間で静かに明滅し続ける。現代作品に精通した演奏家陣を迎えて綴るシリーズ第一弾。
コジマ録音
伊藤祐二:
[1] ソロイスト
Soloist (1996)
[2] 振り返り I
Furikaeri I (1977)
[3] 偽りなき心 II – ピアノ版
Itsuwarinaki-Kokoro II – Version for piano (2015/2022)
[4] ヴァシレ・モルドヴァンの7つの詩
7 Poems by Vasile Moldovan (2002)
[5] メレタン
Meletan (2014)
井上郷子〈ピアノ〉 Satoko Inoue piano [1]-[5]
長島剛子〈ソプラノ〉 Takeko Nagashima soprano [4]
松岡麻衣子〈ヴァイオリン〉 Maiko Matsuoka violin [2]
録音:品川区立五反田文化センター 2023年4月19– 21日
Recorded at Gotanda Cultural Center Hall, 19-21 April 2023
伊藤祐二〈作曲〉Yuji Itoh
1956年生まれ。東京学芸大学及び大学院にて作曲と電子音楽を学ぶ。在学中の1978年にヴァイオリンとピアノのための《振り返り》でデビュー、以来、日本のみならず、Bourges International Electroacoustic Music Festival(フランス)、ASPEKTE International Festival für Musik unserer Zeit(オーストリア)、Distat Terra Festival(アルゼンチン)等の音楽祭をはじめとして世界各地で作品が演奏されている。日本の現代音楽についての講義、自作品に関するレクチャー実施も多い。“nothing but music”ディレクターとして「Hommage à Breccia」、 「4 days concerts and Symposium(コンサートとシンポジウムの4日間〜スイスの現代音楽シーン)」、「ラフカディオ・ハーンプロジェクト」等、国際的な演奏会の企画制作を手掛け、International Composer Competition Città di Udine(イタリア)の審査員も務める。“Antonio Magnoni” prize受賞。
井上郷子〈ピアノ〉
「ムジカ・プラクティカ・アンサンブル」のメンバーを経て、1991年よりソロ活動。“Satoko Plays Japan”をはじめとする多くのリサイタルを行ない、特に、近藤譲ピアノ作品・全曲演奏やモートン・フェルドマン作品の演奏等で高い評価を得る。海外では、ISCM(ルーマニア)、ブエノスアイレス現代音楽週間(アルゼンチン)、Festival für aktuelle Klangkunst(ドイツ)、Contempuls(チェコ)などの国際現代音楽祭からの招聘をはじめ、ヨーロッパ、南北アメリカ、中東各地でソロリサイタルを行なうとともに、リール大学、カイロ音楽院、カリフォルニア芸術大学、ギルドホール音楽院(ロンドン)などのマスタークラスで講師を務める。2008年よりコンサート・シリーズ“Music Documents”を企画・制作、2018年~22年、ピアノ拡張奏法に関するプロジェクト「未来に受け継ぐピアノ音楽の実験」に携わる。ソロCDアルバムは、HatHut Records(スイス)、Emec Discos(スペイン)、ALM Records、Ftarri Classical(日本)等より出版、HatHut Recordsでは、近藤譲の2020年までのすべてのピアノ作品を3枚のCDにレコーディングしている。第10回佐治敬三賞受賞。2023年3月まで国立音楽大学教授を務めた。
長島剛子〈ソプラノ〉
国立音楽大学声楽科卒業。同大学院修士課程独歌曲専攻修了。ドイツ・デットモルト北西音楽大学卒業。その後ケルン音楽大学マスタークラスにてリート解釈法の研鑽を積む。1998年に「長島剛子・梅本実 リートデュオ」を結成し、声楽とピアノによる緊密なコラボレーションにより、19世紀末から20世紀のドイツ歌曲の演奏と紹介を軸に継続的な活動を続けている。1998年、2001年札幌市民芸術祭大賞、平成14年度文化庁芸術祭優秀賞受賞。これまでに「架空庭園の書~新ウィーン楽派の歌曲を集めて」、「光の中のベルリン~第三帝国で禁じられた歌曲」、「遠望~ヘルダリーンの歌曲」、「至福の憧れ~ゲーテ歌曲の現在」の4枚のCDをリリース。また「新ウィーン楽派によるドイツ歌曲集 シェーンベルク/ベルク/ヴェーベルン」(音楽之友社)の楽譜を監修。現在、国立音楽大学及び大学院教授。
松岡麻衣子〈ヴァイオリン〉
桐朋女子高等学校音楽科を経て同大学音楽学部演奏学科卒業、同大学研究科修了。インターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー(フランクフルト音楽・舞台芸術大学)にて研鑽を積む。日本現代音楽協会主催演奏コンクール「競楽XI」第2位。
これまでにアンサンブル・リネア、アンサンブル・インターフェースでヴァイオリニストを務めた他、アンサンブル・モデルン、アンサンブル・レゾナンツ等の演奏団体に客演。ダルムシュタット夏期現代音楽週間、ザルツブルク音楽祭、ジューン・イン・バッファロー(アメリカ)、統営国際音楽祭(韓国)、「秋吉台の夏」現代音楽セミナー&フェスティバル、サントリーサマーフェスティバル他、各地の音楽祭やコンサートに出演する。現代音楽を中心に演奏活動を行い、新作初演に多数携わる。クラリネット三重奏団のフィディアス・トリオ、Ensemble Toneseek、各メンバー。東京成徳短期大学非常勤講師。
イタリア・バロック音楽を演奏活動の中心に据え、その鍵盤音楽を広く網羅するレパートリーを積み上げてきた平井み帆が、20年ぶりとなるソロCDを発表。自身の思い入れの深い作品を選りすぐり、時代・地域・作曲家ごとに異なるバロック音楽の幅広い特色を伝えるプログラムとなった。多彩なアプローチでチェンバロの可能性を巧みに引き出し、豊かなアーティキュレーションをもって音楽に生命を与える演奏表現が、150年にわたるイタリア・バロック音楽の歴史と情感の旅へと導く一枚。
コジマ録音
[1] ルッツァスコ・ルッツァスキ: 第4旋法のトッカータ
Luzzasco Luzzaschi (c.1545 Ferrara-1607 Ferrara): Toccata del quarto tuono
Girolamo Diruta: IL TRANSILVANO DIALOGO SOPRA IL VERO MODO DI SONAR ORGANI,
ET ISTROMENTI DA PENNA. (Venezia,1593)
[2] アスカニオ・マイヨーネ: 《どうぞ私を殺してください》によるディミニューション
Ascanio Mayone (c.1565 Napoli-1627 Napoli): Ancidetemi pur
PRIMO LIBRO DI DIVERSI CAPRICCI PER SONARE (Napoli,1603)
[3] ジローラモ・フレスコバルディ: トッカータ第2番
Girolamo Frescobaldi (1583 Ferrara-1643 Roma): Toccata seconda
TOCCATE E PARTITE D’INTAVOLATURA DI CIMBALO… LIBRO PRIMO (Roma,1615)
[4] ミケランジェロ・ロッシ: ロマネスカによるパルティータ
Michelangelo Rossi (1601/2 Genova-1656 Roma): Partite sopra La Romanesca
Civico Museo Bibliografico Musicale,Bologna [BB 258]
アレッサンドロ・ポリエッティ: ハンガリーの反乱によるトッカティーナ[抜粋]
Alessandro Poglietti (inizio del XVII secolo Toscana-1683 Vienna): Toccatina sopra la Ribellione di Ungheria [estratto]
Arcibiskupský zámek – Hudební sbírka, Kroměříž (1671)
[5] Galop ギャロップ
[6] La decapitation avec Discretion 斬首(慎みを持って)
[7] Passacagliaパッサカリア
[8] Les Kloches (Requiem eternam dona eis domine)
鐘(レクイエム「主よ、永遠の安息を彼らに与えてください」)
ガエターノ・グレコ: チェンバロのためのトッカータ
Gaetano Greco (c.1657 Napoli-1728 Napoli): Toccata per Cembalo
Biblioteca del Conservatorio di musica San Pietro a Majella,Napoli [Musica Strumentale74]
[9] Toccata
[10] Fuga
[11] Corrente
ドメニコ・ズィーポリ: 組曲第2番 ト短調
Domenico Zipoli (1688 Prato-1726 Cordoba/Santa Catalina, Argentina): Suite II in sol minore
SONATE D’INTAVOLATURA PER ORGANO, E CIMBALO PARTE SECONDA (?Roma,1716)
[12] Preludio (Largo)
[13] Corrente (Allegro)
[14] Sarabanda (Largo)
[15] Giga (Allegro)
ピエトロ・ドメニコ・パラディエス: ソナタ第9番 イ短調
Pietro Domenico Paradies (c.1707 Napoli -1791 Venezia): Sonata IX in la minore
Sonate di Gravicembalo (Londra,1754)
[16] Allegro
[17] Andante
[18] ドメニコ・スカルラッティ: ソナタ へ短調 K.69
Domenico Scarlatti (1685 Napoli-1757 Madrid): Sonata in fa minore K.69
Biblioteca Nazionale Marciana,Venezia (1742)
[19] ドメニコ・スカルラッティ: ソナタ へ短調 K.184 アレグロ
Domenico Scarlatti: Sonata in fa minore K.184 Allegro
Biblioteca Nazionale Marciana,Venezia Scarlatti Libro2.
平井み帆(チェンバロ)
Miho Hirai Clavicembalo
■ 楽器 Instrument:
野神俊哉 2003年製作 イタリアンチェンバロ Toshiya Nogami 2003 Italian Harpsichord
■ 調律 Tuning:
[1]-[8]…ミーントーン Meantone
[9-[15] [18] [19]…ヴァロッティ Vallotti
[16] [17]…ヤング Young II
415Hz
録音:三鷹市芸術文化センター 2023年9月13-15日
Recorded at Mitaka City Arts Center Concert Hall, 13-15 September 2023
平井み帆〈チェンバロ〉
桐朋学園大学ピアノ科卒業。同大学研究科、デン・ハーグ王立音楽院(チェンバロ専攻)修了。有田千代子、ジャック・オッホの各氏に師事。在学中よりユトレヒト古楽フェスティバルに出演する等、ヨーロッパ各地で演奏活動を展開する。帰国後は、北とぴあ国際音楽祭、栃木[蔵の街]音楽祭等の主要な音楽祭に出演する他、各地で活発な演奏活動を行っている。特に17、18世紀のイタリア音楽の研究と実践に注力し、2003年よりリコーダーの太田光子と共にコンサートシリーズ「イタリアバロック音楽の変遷」を開催している。日本・スペイン交流事業としてアランフェスにてD.スカルラッティを中心とするプログラムのリサイタルを行った。CDに「イタリアへの夢Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」(いずれもレコード芸術誌特選盤)、「ブクステフーデ:ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロのためのソナタ全集」(文化庁芸術祭レコード部門優秀賞)等がある。現在、愛知県立芸術大学非常勤講師、富山古楽協会チェンバロ講師を務める他、「通奏低音講座」「バロック舞曲講座」「バロックの音楽理論&演奏法講座」等、日本各地でバロック音楽とチェンバロの魅力を伝えるマスタークラスを行っている。
http://hirai-miho.music.coocan.jp/
~豊潤な音色と高度な技巧で鮮やかに描かれるファゴットの多彩なニュアンス
木管楽器の音楽が飛躍的に発展した20世期パリの音楽シーンを映すファゴット名作選~
フィリップ・トゥッツァーは2007年からザルツブルクのモーツァルテウム管弦楽団首席奏者を務め、2008年ARDミュンヘン国際音楽コンクールに入賞。これまでにミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、カメラータ・ザルツブルグ、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、ハンブルクのNDR、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団などに客演。現在、オーストリア・リンツのアントン・ブルックナー私立大学で教鞭をとり、モーツァルテウム夏期アカデミーをはじめ、頻繁にマスタークラスを開催している
コジマ録音
アレクサンドル・タンスマン: ソナチネ
Alexandre Tansman: Sonatine pour basson et piano (1952)
[1] I. Allegro con moto
[2] II. Aria:Largo cantabile
[3] III. Scherzo: Molto vivace
アンリ・デュティユー: サラバンドとコルテージュ
Henri Dutilleux: Sarabande et cortège (1942)
[4] Assez lent
[5] Mouvement de marcia
ポール・ジャンジャン: プレリュードとスケルツォ
Paul Jeanjean: Prélude et Scherzo (1911)
[6] Andante espressivo
[7] Più allegro
シャルル・ケクラン: ソナタ op. 71
Charles Koechlin: Sonate pour basson et piano op. 71 (1818/1919)
[8] I. Andante moderato
[9] II. Nocturne: Presque adagio
[10] III. Final: Allegro, vigoureusement et rudement rythmé
マルセル・ビッチュ: コンチェルティーノ
Marcel Bitsch: Concertino pour basson et piano (1948)
[11] Andante
[12] Allegro vivace
アレクサンドル・タンスマン: ファゴット組曲
Alexandre Tansman: Suite pour basson et piano (1960)
[13] I. Introduction et Allegro
[14] II. Sarabande
[15] III. Scherzo
シャルル・ケクラン: 3つの小品 op. 34
Charles Koechlin: Trois pièces op. 34 (1898-1907)
[16] I. Lent
[17] II. Andante moderato
[18] III. Andante sostenuto
ジャン・フランセ: 2つの小品
Jean Françaix: Deux pièces pour basson et piano (1996)
[19] I. Andante
[20] II. Petit divertissement militaire
ウジェーヌ・ボザ: レシ、シシリエンヌとロンド
Eugène Bozza: Récit, Sicilienne et Rondo pour basson et piano (1936)
[21] I. Récit: Moderato
[22] II. Sicilienne: Allant
[23] III. Rondo: Allegro
[24] マルセル・ビッチュ: ロンドレット
Marcel Bitsch: Rondoletto (1949)
フィリップ・トゥッツァー〈ファゴット〉 Philipp Tutzer, Bassoon
ニコラウス・ワグナー〈ピアノ〉 Nikolaus Wagner, Piano
録音:ブルックナーハウス(リンツ)
Recorded at Brucknerhaus Linz
フィリップ・トゥッツァー[ファゴット]
地元イタリアのボルツァーノでファゴットを始め、同地の音楽院でクラウディオ・アルベルティ教授に師事し、その後、ウィーンでステパン・ターノフスキーに、ハノーファーでダーグ・イェンセンに師事した。
この時期のハイライトは、ヨーロッパ・ユニオン・ユース・オーケストラとグスタフ・マーラー・ユース・オーケストラのメンバーであったこと、クラウス・テューネマンとセルジオ・アッツォリーニのマスタークラスへの参加などである。
デュッセルドルフの“AEOLUS”、ロヴェレートでの“AUDI MOZART”、ハノーファーの“KURT ALTEN”、そして特に2008年のミュンヘンのARDコンクールでの入賞は、ベルリン・フィルハーモニー、ウィーンの楽友協会、ザルツブルクの夏音楽祭でのソロ演奏につながった。
フィリップ・トゥッツァーは、2007年からザルツブルクのモーツァルテウム管弦楽団のソロ・ファゴット奏者を務め、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、カメラータ・ザルツブルグ、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、ハンブルクのNDR、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団などに客演している。
現在、オーストリアのリンツにあるアントン・ブルックナー私立大学で教鞭をとり、ザルツブルクのモーツァルテウム夏期アカデミーをはじめ、頻繁にマスタークラスを開催している。
ニコラウス・ワグナー[ピアノ]
ニーダーエスターライヒ州のヴァイトホーフェン・アン・デア・イブスで生まれた。地元の音楽学校で初めてピアノのレッスンを受ける。
その後、旧ウィーン音楽院のレオニード・ブルンベルクのクラスで研鑽を積み、後にウィーン国立音楽大学に入学。アントワネット・ヴァン・ザブナー(器楽指導)、テレサ・レオポルド(ピアノによる室内楽)、ダヴィッド・ルッツ(声楽伴奏)の指導を受ける。
彼の最も重要な室内楽プロジェクトには、quart@art、プロ・ブラス、テオフィル・アンサンブル・ウィーン、トリオ・マルク・シャガールなどがある。また、マティアス・ショルン、フィリップ・トゥッツァー、ダニエル・シュムッツハルトといった高名な音楽家とも定期的に共演している。
レペティトゥールとして、パスカル・ガロワ、ウィーン・クラリネット・コネクション、カリン・ボネッリ、ジェラルド・クラクスベルガー、ラルフ・マンノなどの音楽家とマスタークラスを開催している。
ウィーン楽友協会、ニューヨーク・オーストリア文化フォーラム、ベルリン、ケルン、バーデンバーデンのドイツ・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・コンツェルトハウス、東京のサントリーホールなど、数多くのコンサートやリサイタルに出演している。
現在、オーバーエスターライヒ州立音楽大学でピアノ教師を務め、リンツにあるアントン・ブルックナー私立大学ではレペティトゥールとして音楽学生を指導している。