クラシック聴き比べの楽しみ 第6回~パッヘルベルのカノン

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クラシック音楽の醍醐味の一つが聴き比べです。同じ曲でも、異なる演奏で聴けば、かなり違って聴こえることもしばしば。より深く曲に親しむことができます。ここではそうしたクラシック音楽の聴き比べを曲ごとにご提案していきます。

BGMとしても人気のパイヤールによるロマンティックな名演

パッヘルベルのカノン ~ バロック名曲集
ジャン・フランソワ・パイヤール指揮パイヤール室内管弦楽団

CD ワーナーミュージック・ジャパン WPCS-21026 国内盤

バロック・アルバムの定番中の定番。優美で華麗な演奏。
バロック音楽の代名詞とも言える名曲「パヘルベルのカノン」をはじめ「アルビノーニのアダージョ」「G線上のアリア」など、バロックの人気曲を豪華に集めた珠玉の1枚です。フランスの指揮者パイヤールによる優美で華麗な演奏は、世界中で大ロングセラーを記録しており、まさにバロック・アルバムの定番中の定番。アンドレ、ランパルなど豪華な共演陣も魅力です。
ワーナーミュージック・ジャパン

収録情報

1.アルビノーニ(ジャゾット編曲):アダージョ ト短調 – 00:09:00
2.ヘンデル:水上の音楽~アラ・ホーンパイプ – 00:03:00
3.マルチェルロ:オーボエ協奏曲ハ短調~アダージョ「ヴェニスの愛」 – 00:04:00
4.パッヘルベル:カノン ニ長調 – 00:07:00
5.ラモー:6声のコンセール第6番~めんどり – 00:04:00
6.ラモー:6声のコンセール第6番~メヌエット – 00:03:00
7.バッハ:管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068~G線上のアリア – 00:05:00
8.バッハ:チェンバロ協奏曲第5番ヘ短調BWV1056~ラルゴ「恋するガリア」 – 00:03:00
9.クラーク:トランペット・ヴォランタリー – 00:02:00
10.オベール:4つのヴァイオリンのための協奏曲ト短調Op.17-6~アリア・グラツィオーソ – 00:03:00
11.バッハ:管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067~ポロネーズ – 00:03:00
12.バッハ:管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067~バディネリ – 00:01:00
13.バッハ:カンタータ第140番~コラール「目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ」 – 00:04:00

ピエルロ(オーボエ)/ヴェイロン=ラクロワ(チェンバロ)/アンドレ(トランペット)/ランパル(フルート)他
パイヤール室内管弦楽団
指揮:ジャン=フランソワ・パイヤール

録音:
1960年[1]/1972年11月 セーヌ=エ=マルヌ、グリジ=スウィヌ教会 [2]
1962年 サン=ミシェル・デ・バティニョル [3] /1968年6月 パリ、リバン聖母教会 [4]
1962年以前 [5] & [6] /1962年11月~12月 [7] /1968年2月 パリ、リバン聖母教会 [8]
1961年以前 [9] /1960年以前 [10] /1971年9月 パリ、リバン聖母教会 [11] & [12]
1968年12月 ドイツ福音教会 [13]


 あらゆるクラシック音楽の中で、最も現代人の生活に馴染んでいる楽曲の一つが「パッヘルベルのカノン」かもしれません。もしかすると、バッハやモーツァルトの曲以上に、ポピュラー・アレンジされたり、別の曲とマッシュアップされたりしているのではないでしょうか。では、「パッヘルベルのカノン」とはいったいどんな曲なのでしょうか。
 この曲を作曲したのはヨハン・パッヘルベル(1653-1706)。あのバッハよりも30年ほど年上のドイツの作曲家です。優れたオルガン奏者であり、弟子も多く、名教師としても有名な存在でした。バッハの長兄であるヨハン・クリストフも一時期パッヘルベルに師事していましたので、バッハ自身もパッヘルベルの影響を間接的に受けています。また音楽理論家としても卓越しており、それは大変知的な創意に満ちた曲集「アポロンの六弦琴」に端的に示されています。
 さて、「カノン」はパッヘルベルが残した唯一の「カノン」です。「カノン」とは固有の曲名ではなく音楽形式のことで、複数のパートが同じメロディを追いかけるように形成していく音楽のことです。一番単純な例が輪唱「かえるの合唱(かえるのうた)」でしょう。パッヘルベルの「カノン」は20世紀になって再発見された作品なのですが、実は「ジーグ」というもう一つの曲と一緒になった「カノンとジーグ」で1つの楽曲を形成しています。ですが、現在では「カノン」のみで演奏されることがほとんどです。そして「パッヘルベルのカノン」を一躍有名曲にしたのが、ジャン・フランソワ・パイヤールでした。パイヤールは、音楽の持つ優美さを最大限生かすため、ゆっくりとしたテンポを設定し、音楽にも手を加え、原曲を大変ロマンティックな音楽に仕立て直しました。この演奏のヒットにより、「パッヘルベルのカノン」は結婚式でのBGMの人気曲となり、ロマンティックなクラシック音楽の代表格となったのです。
 現代における「パッヘルベルのカノン」のイメージを決定づけたパイヤールの演奏は、今聴いても優美で美しく気品があります。華やかできらびやかな雰囲気は、結婚式など祝い事のBGMにぴったりだと思います。「パッヘルベルのカノン」が収録されたこのアルバムは、今でもバロック音楽のベスト盤として高い人気を誇っています。
(山野楽器スタッフ)

先鋭的古楽アンサンブルによる即興性あふれる鮮烈なカノン!

『ムジカ・バロッカ~バロック名演集』
イル・ジャルディーノ・アルモニコ
CD WARNER CLASSICS/ワーナーミュージック・ジャパン 9029-645532 輸入盤

※輸入盤のため日本語解説は付属しておりません。

自由な演奏の多いイタリアのグループの中でも特に大胆な演奏が多いことで知られるイタリアのピリオド楽器アンサンブル「イル・ジャルディーノ・アルモニコ」が、2001年にセッション録音したバロック音楽の名曲を収録したアルバム「ムジカ・バロッカ」の再発売盤
シャープで、パワフルで勢いよく歌い上げるというジャル・ディーノ・アルモニコならではの演奏スタイルの魅力を、バロック有名曲の数々によって楽しめるというアルバム。パッヘルベルのカノンからグリーンスリーヴズまで、オリジナル版の楽譜なども駆使しながら作品の可能性を追求、おなじみの旋律から濃い表現力を引き出した彼らの手腕には素晴らしいものがあります。
スイス南部の山村、モルビオ・インフェリオーレの聖ジョルジョ教会で、2001年の冬、1月29日から2月1日にかけてセッションを組んでおこなわれたレコーディングは質感が高く優れたもの。エンジニアはこの録音の4週間前にアーノンクール指揮ウィーン・フィルのニュー・イヤーコンサートをレコーディングしていたテルデックのベテラン、ミヒャエル・ブラマンで、アイスタント・エンジニアはのちにシモーネ・ヤングのブルックナーなどを手掛けることになるクリスティアン・フェルトゲンが務めています。
ワーナーミュージック・ジャパン

収録情報

J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV.1068
アルビノーニ:オーボエ協奏曲ニ短調 Op.9-2~アダージョ
ヴィヴァルディ:ソプラニーノ・リコーダー協奏曲ハ長調 RV.443
アルビノーニ:ヴァイオリンと通奏低音のための協奏曲~アダージョ
A.マルチェッロ:オーボエ協奏曲ニ短調
テレマン:2つのフルート、弦楽と通奏低音のための協奏曲~グラーヴェ
パッヘルベル:カノンとジーグ ニ長調
伝承曲:グリーンスリーヴズ
パーセル:シャコンヌ ト短調
ヘンデル:シバの女王の入場
アルビノーニ:2つのヴァイオリンと通奏低音のためのアダージョ

【演奏】
イル・ジャルディーノ・アルモニコ
ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮、リコーダー)

【録音】
2001年1~2月、スイス、モルビオ・インフェリオーレ、聖ジョルジョ教会

 「パッヘルベルのカノン」は、バロック時代の音楽ですので、これまでの「クラシック聴き比べの楽しみ」でご紹介してきた他の楽曲(「四季」「ゴルトベルク変奏曲」など)のように、古楽器での演奏ももちろんいくつも存在します。それらはパイヤールの演奏と比べて、概してテンポが速く、はっきりとしたリズムを持っています。
 この楽曲は、もともと、3本のヴァイオリン(または3声部)と通奏低音のために書かれています。オリジナルの形での再現を目指すことの多い古楽器での演奏では基本的にこの編成を取っています。当時の演奏法に従って、即興的な装飾をふんだんに加えることが多く、パイヤールのようなロマンティック演奏と比べるとあまりの違いにびっくりされるかもしれません。ここでは、その代表的な録音として、「四季」の回でも取り上げた先鋭的古楽グループ、イル・ジャルディーノ・アルモニコによる演奏をご紹介します。テキパキ進む「パッヘルベルのカノン」に驚かれるかもしれません。パイヤールの演奏時間のなんと半分以下で終わってしまいます。ですが、弾むようなリズムで抜群にうまい演奏家たちよって奏でられるその演奏は、聴いているとなんだか楽しくなってくるほどです。もちろん続く「ジーグ」もきちんと収録されていますので、「パッヘルベルのカノン」をよりオリジナルに近い形で聴くことができます。
 またこのアルバムには「G線上のアリア」の名前で親しまれている「エール(エア)」を含むバッハの管弦楽組曲第3番、「ヴェニスの愛」のニックネームで知られるマルチェッロのオーボエ協奏曲、リュートで奏でる「グリーンスリーヴズ」など有名曲満載の充実のバロック名曲集になっています。気鋭の古楽グループが本気で人口に介在した有名曲の演奏に挑むとどうなるのか、その意欲的な演奏を存分に楽しめる1枚となっています。輸入盤で日本語の解説は付いていませんが、聴いているだけでも楽しい演奏ですので、バロック音楽入門にもオススメです。
 いろいろな楽しみ方ができる名曲「パッヘルベルのカノン」。演奏も数多く出ていますので、ぜひいろいろ聴き比べてみてください!
(山野楽器スタッフ)

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