ピリオド楽器で聴くハイドン

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モーツァルト、ベートーヴェンの影に隠れ、地味な印象を受けてしまいがちながら、その二人に大きな影響を与えた大作曲家ハイドン。ピリオド楽器演奏が盛んになり、そのイメージが刷新する目覚ましい解釈が続々登場しています。ここでは旧来のハイドン像を覆す鮮烈な録音をご紹介します。

4人の歌手と弦楽四重奏による新ヴァージョンで聴く「十字架上の七つの言葉」

『ハイドン:十字架上のキリスト最後の7つの言葉(声楽と弦楽四重奏版)』
ブノワ・アレ&ラ・シャペル・レナーヌ
1781四重奏団
輸入盤 PTY-7231138 輸入盤
※輸入盤のため日本語解説は付属しておりません。

収録曲

ハイドン:十字架上のキリスト最後の7つの言葉(四重唱と弦楽四重奏版)
ブノワ・アレ(音楽監督)
ラ・シャペル・レナーヌ【エレーヌ・ワルテル(ソプラノ)、サロメ・アレ(メゾソプラノ)、
ブノワ・アレ(テノール)、ピエール=イヴ・クラ(バス・バリトン)】
1781四重奏団【ギヨーム・ユムブレシュト、依田幸司(ヴァイオリン)、
サトリョ・アリョビモ・ユドマルトノ(ヴィオラ)、ジェローム・ヴィダレル(チェロ)】
録音:2022年4月20-22日/聖ジャン・バティスト教会(サン=ジャン=サヴェルヌ

 ハイドンの『十字架上のキリストの最後の七つの言葉』は、スペインのカディス聖堂から、聖金曜日の礼拝において福音書にある十字架上のキリストの最後の七つの言葉を読み、瞑想する時のための器楽作品として依頼されました。ハイドンはこの要望に応え、序奏と後奏、緩やかな7つのソナタ形式からなるオーケストラ作品を作り上げました。極めて特殊な作品にもかかわらず、大評判となり、ヨーロッパ各地で演奏されるようになります。やがてハイドンは、この曲を弦楽四重奏に、そしてドイツ語の歌詞による合唱とオーケストラによるオラトリオ版に編曲します。またピアノ独奏版の作品の監修まで行っています。それだけハイドンにとって特別な作品であり、作曲家としての自身を代表する作品とも考えていたそうです。中でもオラトリオ版は、その後もヨーロッパ各地で演奏される大ヒット作品となりました。
 これだけのヒット作品ですから、発表当時からさまざまな編曲がなされていたそうです。特にオラトリオ版は、オーケストラをピアノにリダクションし、英語やイタリア語に翻訳され、出版されることもあったそうです。現代でもオリジナルのオーケストラ版だけでなく、オラトリオ版、弦楽四重奏版、ピアノ独奏版など、さまざまな録音が出てきているほどのハイドンの傑作ではありますが、緩やかな楽章がほとんどの部分を占めるため、演奏には高い集中力が要求されます。それだけに録音に臨む演奏家たちも大変な緊張感をもって演奏しているようで、各版ですばらしい録音も数多く登場しています。そこにこの珍しい編曲版、声楽四重唱と弦楽四重奏による編曲版が加わりました。
 声楽を担当するブノワ・アレ率いるラ・シャペル・レナーヌは、残念ながらいまは活動を停止してしまった個性的古楽レーベル「K617」において、シュッツやブクステフーデ、バッハなどのすばらしい録音を残している古楽アンサンブルです。ここでは、ブノワ・アレを含む主要メンバー4人が参加しています。共演の弦楽四重奏団、1781四重奏団は、ハイドンが弦楽四重奏曲の作品に力を入れ始め、次ぐ次と傑作を生んでいくようになる記念の年を名前に関した2019年結成の若いピリオド楽器弦楽四重奏団です。声楽と弦楽の計8人で臨む「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の構成はオラトリオ版を基にし、第5ソナタを除く各ソナタの前にア・カペラを、第5ソナタの前には第二の序奏を挿入しています。器楽部分は弦楽四重奏版を基に、管楽器部分のパートも考慮に入れた編曲になっているとのことです。弦楽四重奏の序奏からはじまる緊張感の高い演奏ですが、声楽部分は、歌詞の言葉を強調する表現による迫真の歌唱を聴くことができます。4人の歌手それぞれが独唱者のように強い表現をしながら、4パートの全体のバランスを保つという驚異的な歌唱は圧巻です。弦楽四重奏も声楽に負けず劣らずの主張の強い表現を聴かせていますが、ここでも声楽のバランスを崩すことがなく、8人での表現が一つになって強く聴き手に伝わるようになっています。新たな編曲版は大成功していると言って過言ではないでしょう。ハイドンの傑作の演奏に新たな可能性を示した名演奏です(須田) 

日本が誇るピリオド楽器の名手たちによるハイドン兄弟の協奏曲集

『ハイドン兄弟の協奏曲集』
寺神戸亮(①ヴァイオリン、②ヴィオラ)
天野乃里子(チェンバロ、指揮)
「バロックの真珠たち」室内合奏団
[山縣さゆり(ヴァイオリン)、迫間 野百合(ヴァイオリン)、森田芳子(ヴィオラ)、
ルシア・スヴァルツ(チェロ)、ロベルト・フラネンベルク(コントラバス)
輸入盤国内仕様 KKC-6785 日本語解説付き

収録曲

①ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809):ヴァイオリン協奏曲第4 番 ト長調 Hob.VIIIa/4
②ミヒャエル・ハイドン(1737-1806):ヴィオラとチェンバロのための協奏曲 ハ長調 P55, MH41
カデンツァ作:寺神戸亮

寺神戸亮(①ヴァイオリン、②ヴィオラ)
天野乃里子(チェンバロ、指揮)
「バロックの真珠たち」室内合奏団
山縣さゆり(ヴァイオリン)迫間 野百合(ヴァイオリン)
森田芳子(ヴィオラ)、
ルシア・スヴァルツ(チェロ)
ロベルト・フラネンベルク(コントラバス)]

録音:2022年9月19-21日/ハールレム、ドープスゲジンデ教会

 日本が誇るバロック・ヴァイオリンの第1人者、寺神戸亮と、オランダを中心に活躍するチェンバロ奏者、天野乃里子とのそのアンサンブルの共演によるハイドン兄弟の協奏曲2編を収めたアルバムです。
 兄ヨーゼフの「ヴァイオリン協奏曲 ト長調 Hob.VIIIa/4」は、日本では第4番として知られるもので、真偽不明の作品が多い中で、新作とされる数少ない中の一つ。ハイドンとともにエステルハージ宮廷楽団に仕えていた当代きってのヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストであったルイジ・トマジーニのために書かれたと言われています。バロック時代のソロ・コンチェルトの要素を残しながらも、いかにも古典派的な美しい旋律とハイドンならではの各声部のこだわりが詰まった名作です。寺神戸亮の瑞々しいヴァイオリンは、ハイドンの名作に新たな光を当てるすばらしさ。特に第2楽章「アダージョ」での優美な演奏が際立ちます。
 弟ミヒャエルの協奏曲は、ヴィオラと鍵盤楽器のための協奏曲で、ここでは鍵盤楽器をチェンバロで演奏しています。バロックの二重協奏曲の要素を残しながらも、当時のフランスの公開演奏会「コンセール・スピリチュエル」で流行したような協奏交響曲的な側面も見せる楽曲です。ヴィオラが独奏というのも珍しいでしょう。ヴィオラとチェンバロの音色が見事に混じり合い、典雅な響きを聴かせてくれる隠れた名曲と言えるでしょう。ミヒャエル・ハイドンは教会音楽の作曲家のイメージが強いですが、こうした器楽作品が優れた演奏で聴けるということは、その真価を知る意味でも意義深いことでしょう。
 どちらの協奏曲のカデンツァは寺神戸亮が作曲したものを使用しています。楽曲の持つ特徴と調和した見事なものです。また共演の「バロックの真珠たち」室内合奏団は、各パート一人の小編成ながら、18世紀オーケストラのメンバーの腕利きばかりで、親密なアンサンブルで独奏を支え、音楽の色彩をより豊かなものとしています。この美しい演奏で、ハイドン兄弟の協奏曲の魅力にぜひ触れてみてください!(須田) 

巨匠ベルニウスによる圧巻の解釈!

『ハイドン:十字架上のキリストの最後の七つの言葉』(オラトリオ版)
フリーダー・ベルニウス指揮シュトゥットガルト室内合唱団、ホフカペレ・シュトゥットガルト

アンナ=レナ・エルバート(ソプラノ)ソフィー・ハルムセン(アルト)
フロリアン・ジーファース(テノール)ゼバスティアン・ノアック(バス)
CD CARUS 83520 輸入盤 

※輸入盤につき、日本語解説は付属していません。

 『十字架上のイエス・キリストの最後の七つの言葉』は、バロック時代に主にドイツなどのプロテスタント圏で作られた福音書のテキストを歌詞とした宗教音楽で、音楽史上では、ハインリヒ・シュッツの作品が最もよく知られています。ハイドンの同名作は、シュッツと並ぶ知名度を誇っていますが、ハイドンの場合はプロテスタントではなく、カトリック側のイエズス会の要請により、作曲されたという点でプロテスタントの教会音楽の伝統とはまた違う作品だと言えます。1786年、50代半ばのハイドンは、スペインのカディス聖堂から、聖金曜日の礼拝において福音書にある十字架上のキリストの最後の七つの言葉を読み、瞑想する時の音楽としてこの曲を依頼されました。興味深いところは、礼拝の音楽ではあるものの、器楽曲として依頼されており、ハイドンはこれにあわせて7つの言葉に呼応するソナタ形式の管弦楽作品として仕上げています。瞑想の音楽の雰囲気を保つため、最後の地震の場面以外が緩やかな楽章で構成されているのです、かなり異色な作品ですが、大評判を呼び、ヨーロッパ各地のカトリック教会で演奏されたといいます。ハイドンとしても自信作であったようで、自ら弦楽四重奏曲に編曲し、他者によるピアノ独奏編曲を監修しています。その後の1795年、ロンドンからウィーンへの帰途で、南ドイツの都市パッサウに立ち寄ったハイドンは、当地でこの曲が、歌詞を追加されカンタータとして演奏されているのを聴いているそうです。これに触発されたハイドンは、このカンタータ版を土台に自ら宗教合唱曲として再度編曲することを決意、ファン・スヴィーテン男爵の協力を得て、ドイツ語の歌詞にも手を加え、追加の楽曲と楽器編成も変えて、「4人の独唱者と合唱、管弦楽のためのオラトリオ」として完成させました。1796年にウィーンで初演を迎えたこのオラトリオ版は、やがてオリジナルの管弦楽版よりも人気を博し、ハイドンの生前に何度も上演されたといいます。ハイドンはオラトリオ版の編曲にあたり、4番目と5番目の言葉を扱った曲の間に序曲を挿入し、オラトリオにふさわしい2部構成としました。また7曲のうち6曲には冒頭に無伴奏合唱を付加し、楽器もクラリネット、トロンボーン、コントラファゴットを追加、より大きな規模の作品としています。特に無伴奏合唱の付加は、それが中世のファルソボルドーネ(フォーブルドン)風の古い様式によるものなので曲の神秘性を増す効果を生み、オラトリオとしての荘厳さを生んでいるのです。また合唱の構成も、イギリスでヘンデルのオラトリオを体験したことの影響を伺わせる構築感の強いモニュメンタルなものになっています。レクイエムを思わせるニ短調で始まることもあり、どこかモーツァルトのレクイエムを想起させる和声展開も聴かれるところが面白いのですが、オラトリオ版の初演時には既にモーツァルトはこの世を去っており、ジュスマイヤーたちが完成させたレクイエムも1793年には初演を迎えていることから、少なくともオラトリオ版がモーツァルトのレクイエムに影響を与えたことはありえないのですが、管弦楽からの影響は考慮に価するかもしれません。特にジュスマイヤーの補筆部分には、調性以上に個の作品との類似した雰囲気の部分があるように思えます。
 ハイドンの作曲法の粋と強い思いが込められたこの作品の演奏に、合唱界の巨匠フリーダー・ベルニウスほどの適任者は稀でしょう。50年の歴史を誇るシュトゥットガルト室内合唱団と、優れたピリオド楽器奏者を集めたホフカペレ・シュトゥットガルト、そして教会音楽を歌いこなす独唱者陣を率いて、すばらしい演奏を繰り広げています。ほとんどが緩やかなテンポの曲なので、その緊張感を維持することは困難なのですが、この録音では全編に渡り強い緊張感を保ち続け、深く心を動かす音楽として聴き手に訴えかけてきます。特に6つの曲の冒頭の無伴奏合唱が効果抜群で、精度の高い合唱の独壇場と言えるでしょう。ベルニウスは40年ほど前に同曲を録音しているので、これは再録音となるのですが、前回の録音がモダンオーケストラとの共演であったのに対し、今回はピリオド楽器オーケストラとの共演であり、与える印象はかなり異なります。何よりベルニウスのより深まった解釈が圧巻で、ハイドンのこの作品の真価を聴かせる大名演と言っても過言ではないでしょう。強い宗教性ゆえに、ハイドンの他の作品と比べて、とかく避けられがちなこの作品ですが、音楽としてもハイドンの作曲法の粋が込められているので、ぜひとも多くの方に聴いていただきたいものです。(須田) 

ヤーコプスがダイナミックに奏でる「スターバト・マーテル」!

『ハイドン:スターバト・マーテル』(1803年、ジギスムント・ノイコム編曲による管楽器拡張版
ルネ・ヤーコプス指揮バーゼル室内管弦楽団

チューリッヒ・ジング・アカデミー(合唱指揮:フロリアン・ヘルガート)
ビルギッテ・クリステンセン(ソプラノ)クリスティーナ・ハンマーシュトレーム(アルト)
スティーヴ・ダヴィスリム(テノール)クリスティアン・イムラー(バス)
CD PENTATONE PTC5186953  輸入盤

※輸入盤につき、日本語解説は付属していません。

 これまで「天地創造」や「四季」などの優れたハイドン録音を残してきたルネ・ヤーコプスが、ハイドンの宗教音楽の傑作『スターバト・マーテル』を録音!しかも一般的な稿ではなく、1803年にハイドンの弟子である作曲家ノイコムがオーケストレーションを手掛けた管楽器拡大版での演奏となっています。ハイドンの『スターバト・マーテル』は1767年に作曲されてすぐに、パリを中心としたヨーロッパ各地で上演され、絶大な支持を集める人気の作品となりました。ハイドン自身、大変な自信作だったようで、晩年になっても自らの代表的作品として挙げていたほどでした。上演ごとにさまざまな事情によって楽器編成などに機会的なアレンジが加えられていたようですが、1803年の上演に当たってはハイドンに作曲法を師事していたノイコムが楽器編成を大幅に拡大し、原曲の持つ魅力はそのままに、よりダイナミックな作品に仕立て直しました。オリジナルの楽器編成が、弦楽合奏、オルガン、オーボエ(イングリッシュホルンの持ち替えあり)のところ、ノイコムによる編曲版では、管楽器が大幅に拡張され、フルート1、オーボエ2、クラリネット2、バスーン2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン2となり、さらにティンパニーが加えられているのですから、その規模の拡大具合はかなりのものであったことが分かります。ハイドンが細部にまでこだわったテキストを的確に表現する音楽は、楽器の増強でより色彩感を増し、その意図は明確になりました。おそらく編曲に当たっては監修を行うなど、ハイドン自身も納得した上だったのではないかと思われます。
そうした優れた編曲によって表現力が増した『スターバト・マーテル』こそ、宗教音楽においても強いドラマ性を重視するヤーコプスが望んだ形だったのかもしれません。作品によってモダン楽器もピリオド楽器も弾きこなすフレキシブルなオーケストラ、バーゼル室内管弦楽団を指揮して、実に劇的な作品として現代に蘇らせています。宗教曲の歌唱で定評ある名歌手たちと、スイスの優れた合唱団も名歌唱で応えています。存命当時のハイドンが望んだダイナミックなサウンドを再現する名演奏をお聴き逃しなく!

気鋭の弦楽四重奏団が奏でる鮮烈な響き!

『ハイドン:弦楽四重奏曲第75-77番』
弦楽四重奏曲第75番 ト長調 Op.76-1 Hob.Ⅲ-75
弦楽四重奏曲第76番 ニ短調「5度」 Op.76-2 Hob.Ⅲ-76
弦楽四重奏曲第77番 ハ長調「皇帝」 Op.76-3 Hob.Ⅲ-77

キアロスクーロ四重奏団
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン/Anselmo Bellosio c.1780)
パブロ・エルナン=ベネディ(ヴァイオリン/Andrea Amati 1570)
エミリー・ホーンルンド(ヴィオラ/Willems,c.1700)
クレール・チリヨン(チェロ/Carlo Tononi 1720)

録音:2017年12月/ゼンデザール(ブレーメン)
CD BIS KKC6173  輸入盤
国内仕様

 最も注目を集めるヴァイオリニストの一人、アリーナ・イブラギモヴァが英国王立音楽大学(RCM)で学んでいた友人たちと結成した気鋭の弦楽四重奏団、キアロスクーロ四重奏団。ガット弦の使用し、ピリオド奏法を徹底させた演奏法で、弦楽四重奏演奏に新風を巻き起こしています。
 北欧レーベルの雄BISと契約をし、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトといった古典派の弦楽四重奏曲を録音、世界的に高い評価を獲得しています。
 弦楽四重奏曲の録音は、古典派作品のピリオド楽器演奏が珍しくない現在においても、多くはありません。そんな中で、優れた技巧を持ち、結成から15年以上のキャリアを経てきたキアロスクーロ四重奏団の演奏は、作品から従来の演奏とは異なる側面を引き出す新鮮なものとなっています。
 このアルバムには、ハイドンの弦楽四重奏曲の中でも知名度の高い「皇帝」を含む第75~77番を収録し、清新な演奏を繰り広げています。第1ヴァイオリンの優位性があるハイドンの弦楽四重奏曲にあって、イブラギモヴァのきらめく技巧性は最大の効果を発揮していると言えるでしょう。生命力あふれるキアロスクーロ四重奏団の演奏は、ハイドンの弦楽四重奏曲の新たな魅力を伝えてくれています。

俊英たちのソロで聴く協奏曲集

『ハイドン:協奏曲集』
ハイドン:
1.ヴァイオリン協奏曲ト長調Hob. VIIa:4,
2.ホルン協奏曲ニ長調Hob.VIId:3,
3.チェンバロ協奏曲ト長調Hob.XVIII:4,
4.交響曲第83番ト短調「めんどり」Hob.I:83,
5.幻想曲ハ長調Hob.XVII:4,
6.チェンバロ協奏曲ニ長調Hob.XVIII:11,
7.ヴァイオリンとチェンバロのための協奏曲ヘ長調Hob. XVIII:6


リッカルド・ミナージ(ヴァイオリン:1,7/指揮:1、2、3)
マクシム・エメリャニチェフ(チェンバロ:3、5、6、7/指揮:4、6、7)
ヨハネス・ヒンターホルツァー(ホルン:2)
イル・ポモ・ドーロ(1~4、6、7)

録音:2014年2月/イタリア、ロニゴ、ヴィラ・サン・フェルモ
CD ERATO/WARNER CLASSICS 2564.605204  輸入盤

 2014年に録音された今をときめく俊英たちによるハイドンの協奏曲集。現在、アンサンブル・レゾナンツを率いて、話題の録音を連発する気鋭のバロック・ヴァイオリン奏者で、指揮者のリッカルド・ミナージと、クルレンツィスとムジカ・エテルナのモーツァルトのオペラ録音で、通奏低音奏者として活気あるフォルテピアノを演奏し、話題を集め、日本での公演も大絶賛された鍵盤奏者マクシム・エメリャニチェフという、今、クラシック界で最も注目を集めるアーティストが共演しています。
 ハイドンの協奏曲と言えば、2曲のチェロ協奏曲が群を抜いて有名で、それ以外の作品は、取り上げられることも少なく、録音も多くないのですが、ここに取り上げられた協奏曲を聴けば、それが不思議に思えるような、名作ばかりであることに気が付かれるでしょう。しかも演奏者たちがすばらしいのですから、より一層、作品は輝きます。対比の激しいダイナミックな表現力、緩徐楽章における優美な雰囲気など、ハイドン作品が持つ多彩な表情を余すところなく、教えてくれます。また、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスやウィーン・アカデミー、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルに参加するなど、歴史的ホルン演奏でもトップクラスの活躍を見せるヨハネス・ヒンターホルツァーの圧倒的テクニックも聴きものです。もちろん、現在では、最高峰のピリオド楽器オーケストラと評価されているイル・ポモ・ドーロの演奏もさすがです。
 輝かしい才能が乱舞するハイドンの協奏曲集をお聴き逃しなく!

リ・インコーニティの生気あふれる協奏曲集

『ハイドン:エステルハージのための協奏曲集』
①ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 Hob.VIIa:1
②チェロ協奏曲 ハ長調 Hob.VIIb:1
③ヴァイオリン協奏曲 ト長調 Hob.VIIa:4


リ・インコーニティ
①③アマンディーヌ・ベイエ(ヴァイオリン)
②マルコ・チェッカート(チェロ)
録音:2018年1月、テアトル・オーディトリウム(ポワチエ)

CD harmonia mundi KKC6004 輸入盤国内仕様

 古楽教育の聖地バーゼル・スコラ・カントールムに関わる優れた演奏家たちによって結成されたピリオド楽器アンサンブル、リ・インコーニティによるハイドンの協奏曲集。ハイドンの同僚でエステルハージ家の楽団のコンサートマスターであったルイジ・トマジーニと、同楽団のチェロ首席のヨーゼフ・フランツ・ヴァイグルのために書かれたという協奏曲を収録しています。当時のエステルハージ家の楽団の規模や編成を調査し、それとほぼ同等の編成を組み、ハイドン存命当時の演奏の疑似再現が試みられています。躍動感あふれ、颯爽とした演奏は、聴き手を魅了。ハイドンの協奏曲の中でもとりわけ有名なチェロ協奏曲第1番では、古楽からジャズまで弾きこなす才人マルコ・チェッカートの深みのあるチェロの音色と抜群のテクニックが堪能できます。2曲のヴァイオリン協奏曲では、リ・インコーニティを主宰し、バーゼル・スコラ・カントールムのヴァイオリン教授としても多くの有望な若手を輩出するアマンディーヌ・ベイエの美音と卓越した技巧が楽しめます。緩徐楽章が美しいのも特長で、ハイドンの協奏曲の魅力が詰まった格好のアルバムとなっています。

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