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『J.S.バッハ/エーラー(リイマジンド):
パルティータ第1番、第2番、第5番 (室内管弦楽版) ほか』
ロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージック・ソロイスツ・アンサンブル
トロント王立音楽院グレン・グールド校のメンバー
トレヴァー・ピノック(指揮)
録音: 2023年3月27-29日
スネイプ・モルティングス、サフォーク、UK
CD LINN
輸入盤 CKD730
国内仕様盤 NYCX10423
収録情報
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750)/トーマス・エーラー(1980-)(リイマジンド)
1-8. パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV 825
1. Praeludium プレリューディウム(前奏曲)
2. Allemande アルマンド
3. Corrente コレンテ
4. Sarabande サラバンド
5. Menuet I メヌエット I
6. Menuet II メヌエット II
7. Menuet I メヌエット I
8. Gigue ジーグ
9-14. パルティータ 第2番 ハ短調 BWV 826
9. Sinfonia シンフォニア
10. Allemande アルマンド
11. Courante クーラント
12. Sarabande サラバンド
13. Rondeaux ロンドー
14. Capriccio カプリッチョ
15-21. パルティータ 第5番 ト長調 BWV 829
15. Praeambulum プレアンブルム(前奏曲)
16. Allemande アルマンド
17. Corrente コレンテ
18. Sarabande サラバンド
19. Tempo di Minuetta
テンポ・ディ・ミヌエッタ
20. Passepied パスピエ
21. Gigue ジーグ
- Corrente コレンテ
~ パルティータ 第6番 ホ短調 BWV 830 - エーラー: Brook of Light 光の小川
- 古楽演奏の泰斗トレヴァー・ピノックが、「ゴルトベルク変奏曲」に続く、バッハの鍵盤音楽の室内管弦楽版を録音しました。「ゴルトベルク変奏曲」では、ヘルマン・シェルヘンの遺品の中から1994年見つかったというユゼフ・コフレル(1896-1944)の編曲版を使用しての録音でしたが、今作では、新たな編曲をロイヤル・アカデミー出身の作曲家トーマス・エーラーに依頼し、パルティータ第1番 変ロ長調 BWV825、第2番 ハ短調 BWV826、第5番 ト長調 BWV829の3曲に加え、第6番 ホ短調 BWV830のコレンテが選ばれ、室内楽版として収録されています。
トレヴァー・ピノックは、前作に続き、首席客演指揮者を務めるロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージック・ソロイスツ・アンサンブルを指揮、今作ではトロント王立音楽院グレン・グールド校のメンバーを加え、4-4-3-3-1という弦楽器編成、フルト、オーボエ、コーラングレ、ファゴットという管楽器編成で録音に臨んでいます。エーラーの編曲では、バロックの語法を生かしながらも、ところどころロマン派的な語法を融合し、極めて自然な形でバッハの鍵盤音楽を室内オーケストラ用に変換されています。エーラーは作品によって異なる編曲アプローチをしているようで、例えば第1番は管楽器の色彩感を強く押し出し、バッハの管弦楽組曲を思わせます。第2番では、逆に弦楽器のソロや重奏を目立たせ、室内楽のような雰囲気を出しています。第5番は最もロマンティックな編曲で、モダンなイメージを持たせています。数十年に渡り、数多くのバッハ作品を演奏してきた、イギリスにおけるバッハ演奏の大家であるピノックの指揮は、ピリオド奏法による鍵盤音楽とは異なるアーティキュレーションで、あくまで現代に編曲されたバッハ作品として楽曲にアプローチしているように聴こえます。ピノックのバッハ変奏と同様に清廉でスタイリッシュなイメージを保ちながらも、バロックの室内楽や管弦楽曲というよりも、古楽演奏が盛んになる前のモダン楽器によるバッハ演奏を思わせる雰囲気を持たせ、どこか懐かしささえ覚えます。室内オーケストラとして新たな装いをまとったバッハのパルティータをじっくりとお楽しみください。(須田)