古楽の名歌手キールとギターの名手が奏でるシューベルト歌曲の世界!

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schubert Maria Cristina Kiehr Pablo Marquez

『あこがれ~シューベルト:ギター伴奏歌曲集』
マリア・クリスティーナ・キール(ソプラノ)パブロ・マルケス(ロマンティック・ギター)

録音:不明(2023年?)
CD VISION FUGITIVE 3521383478516 輸入盤

収録情報

シューベルト:
1 Sehnsucht D636 あこがれ
2 Nachtstück D672 夜曲
3 Der Pilgrim D794 巡礼
4 Auf dem Wasser zu singen D774 水の上で歌う
5 Lied eines Schiffers an die Dioskuskuren D360 ふたご座の星に寄せる舟歌
6 Der Zwerg D771 小人
7 Meeres Stille D216 海の静けさ
8 Hänflings Liebeswerbung D552 紅ひわの求愛
9 Der Wanderer D649 さすらい人
10 Suleika II D717 ズライカ
11 Aus Heliopolis I D743(753?) ヘリオポリスよりⅠ
12 Der Alpenjäger D588 アルプスの狩人
13 Wehmut D772 悲しみ
14 Die Sterne D939 星
15 Gesänge des Harfners I D478 竪琴弾きの歌

マリア・クリスティーナ・キール(ソプラノ)
パブロ・マルケス(ロマンティック・ギター)

 アルゼンチンを故郷に持つ二人の演奏家の共演によるシューベルトのギター伴奏歌曲集。
マリア・クリスティーナ・キールは、古楽のソプラノ歌手を代表する一人で、ルネ・ヤーコプスとの度重なる共演や、自らのアンサンブル・コンチェルト・ソアーヴェでの演奏など、数々の名演・名録音で知られています。
 パブロ・マルケスは、20‐21世紀のギター作品のスペシャリストとして、ルチアーノ・ベリオやマウリツィオ・カーゲル、ジェルジュ・クルターグなど現代を代表する作曲家からの信頼が厚い名手として知られています。またヒストリカル・ギターへの造詣も深く、特に長年、シューベルトのギターに対する研究を行っており、その成果がこのアルバムにつながっているようです。
 遺品の中に、アルペッジョーネを発明したことで知られる当時の著名なギター製作家ヨハン・ゲオルク・シュタウファーのギターが含まれていたことから、シューベルトはギターを弾くことができ、作曲にも用いていたと見られていますが、シューベルトのオリジナル作品の中には、ギターを含む作品はあまりありません。歌曲の伴奏に用いられていたとされますが、ピアノ伴奏に比べれば、その演奏・録音はあまりに少なく、録音されたとしても「珍しい企画」とされて、一般的になることはありませんでした。マルケスはこの状況を打破すべく、優れたアルバムを世に出したいと思っていたようです。
 マルケスは、シューベルトの同時代に製作されたシュタウファー製のようなギターは、「持ち運べるピアノフォルテ」と表現できるほど、当時のピアノに近しい音色を持っていたとし、出版された歌曲がすばやく伝搬する手助けになっていただろうとしています。またシューベルトの生前より、ギター伴奏版歌曲集は出版されていて、有名な「さすらい人」を含む少なくとも3曲は、ピアノ伴奏版よりも先に出版されていたとしています。そうしたことを受けて、このアルバムにはシューベルトの生前または死後すぐの同時代にギター伴奏として出版されたであろうシューベルトの歌曲が収録されています。優れた編曲はそのままの編曲で、オリジナル(初版)が見つからないものは、当時の手法でマルケス自らが編曲を行って録音されています。また使用楽器は、シューベルトが所有していたヨハン・ゲオルク・シュタウファーの息子でやはり著名なギター製作家だったヨアン・アントン・シュタウファーの楽器を使用しているようです。
 キールは持ち前の美声、丁寧な発音と歌いまわしで、ギターの音色との相性も抜群。見事なテクニックで歌とあわせるマルケスのギターも伴奏と呼ぶよりも、ソプラノとの重唱とでも呼ぶべき深みを持っています。この味わい深さは声とギターならではでしょう。
 ギターと一緒に歌うシューベルトの歌曲がより知られてほしい。これはそんな演奏家の強い思いが詰まった画期的なアルバムなのです。(須田)

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