必聴傾聴盤紹介~『ヴィヴァルディ:四季、ラ・フォリア/ジュリアン・ショーヴァン&ル・コンセール・ド・ラ・ロージュ』

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『アントニオ・ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集『四季』、ラ・フォリア、アリア「太陽の強い輝きは」』
ポール=アントワーヌ・ベノス=ディアン(カウンターテナー)

ジュリアン・ショーヴァン(ヴァイオリン)ル・コンセール・ド・ラ・ロージュ
CD ALPHA/ナクソス・ジャパン NYCX-19456 輸入盤国内仕様日本語解説付き

2024年3月15日発売予定

収録情報

 アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741):
1-3. ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調 Op. 8-3 RV 293 「秋」
4-6. ヴァイオリン協奏曲 ヘ短調 Op. 8-4 RV 297 「冬」
7. アリア 「太陽の強い輝きは」 ~歌劇《救われたアンドロメダ》 RV Anh. 117
8-10. ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 Op. 8-1 RV 269 「春」
11-13. ヴァイオリン協奏曲 ト短調 Op. 8-2 RV 315 「夏」
14. トリオ・ソナタ ニ短調 Op. 1-12 RV 63 「ラ・フォリア」

ポール=アントワーヌ・ベノス=ディアン(カウンターテナー)…7
ジュリアン・ショーヴァン(ヴァイオリン&指揮)
ル・コンセール・ド・ラ・ロージュ
サビーヌ・シュトフェル(ヴァイオリン1)
マリーク・ブーシュ(ヴァイオリン2)
ピエール=エリック・ニミロヴィツ(ヴィオラ)
フェリクス・クネヒト(チェロ)
ミケーレ・ゼオリ(ダブルベース)
キート・ガート(テオルボ&バロック・ギター)
カミーユ・ドゥラフォルジュ(チェンバロ)

録音: 2023年2月 在仏イタリア大使館シチリア劇場、パリ
収録時間: 57分
※国内仕様盤日本語解説…坂本龍右、 歌詞訳…白沢達生

【新鮮解釈、ショーヴァンの「四季」と「ラ・フォリア」】
 モーツアルトの後期交響曲や「レクイエム」のような有名作をこれまでにない視点からの新解釈で披露し、世界中の音楽ファンを新鮮な驚きと共に楽しませてくれているジュリアン・ショーヴァンによる『四季』が登場。子供たちや俳優など様々な人々とこの作品で共演してきたという彼ら。特に、パリ五輪の公式ダンスでも話題のフランスの振付師ムラッド・メルズキのダンサー達からは大きな影響を受けたと言い、極端な独創性や誇張されたダイナミクスなどに頼ることなく、自然な身体的バランスと呼吸、自発性から今回の演奏が生まれたということです。とはいえ、ここに聴く演奏は十分に刺激的。曲順は通常の「春」からではなく「秋」から始められており、間に近年発見されたヴァイオリンのオブリガート付きアリアを挟み、最後にはフォリアを置くという構成となっています。弦楽を各パート一人ずつに絞った緊密なやり取りの中で映えるショーヴァンの緩急織り交ぜた妙技のほか、テオルボとバロック・ギターには名手キート・ガートも参加してアンサンブルを支え、時には煽るように先導することも。名盤あまたの『四季』ですが、異彩を放つ注目盤がまた一つ加わりました。
ナクソス・ジャパン

 「また四季か」と思われる方もいいかもしれません。確かにヴィヴァルディの「四季」の録音は、年に数種はリリースされますし、過激な解釈も出尽くした感があり、食傷気味になって致し方ないかもしれません。しかし、すばらしい演奏家たちによる録音が登場するとなると、聴き飽きるほど聴いた作品でさえ、聴かざるを得ないというのも音楽ファンの性ではないでしょうか。このアルバムはそうした例に当てはまる❝聴くしかない❞「四季」の新録音です!
 演奏は、ここ数年、積極的なリリースが続くジュリアン・ショーヴァン&ル・コンセール・ド・ラ・ロージュ。2015年に結成された比較的新しいこのピリオド楽器グループの名前は、18世紀パリの演奏会であり、その演奏団体名でもある、ル・コンセール・ド・ラ・ロージュ・オランピークから取られています。この演奏会のためにハイドンはいわゆる「パリ交響曲」(交響曲第82~87番)を作曲しました。そのため、ジュリアン・ショーヴァン率いるこのグループはハイドンの「パリ交響曲」の録音をAparteレーベルから続々とリリースし、同時代の知られざる作品とハイドンの交響曲をカップリングする興味深いプログラムとすばらしい演奏でヨーロッパを中心に高い評価を獲得し、名声を高めてきました。そしてALPHAレーベルでは、パリ演奏版のペルゴレージの「スターバト・マーテル」とハイドンの交響曲第49番「受難」を組み合わせたアルバムや、モーツァルトのレクイエムのパリ初演版など、フランスでの演奏を想定とした興味深い試みのアルバムをリリースし、話題を呼んでいます。そんな彼らがヴィヴァルディの「四季」をリリースするのです。
 ブックレットにおいて、ジュリアン・ショーヴァンは「なんら奇抜なことはしていない」演奏である旨のことを書いています。演奏において彼らが特に影響を受けたのは、フランスの振付師ムラッド・メルズキのダンサー達のダンスだといい、そこから自然なバランスを学んだのだそうです。ですが、いざ聴いてみると、実に刺激に満ちた斬新な「四季」の演奏となっているのです。
 まずはプログラム。なんと彼らの「四季」は「秋」から始まります。そして「冬」に続き、オペラ「救われたアンドロメダ」からのアリア、「春」「夏」と続き、最後はヴィヴァルディの作品1の収録されている「ラ・フォリア」で締めくくられています。なぜ、この曲順であるのかは、ブックレットでは説明されていないのですが、彼らにとってはこれが自然に導き出された答えなのかもしれません。いきなり「秋」からスタートする「四季」にはびっくりさせられますが、冒頭から突撃するような切れ味鋭いアプローチで聴き手を最初から刺激します。独奏ヴァイオリンの響きは美しく、卓越した技巧にも耳を奪われます。小編成のアンサンブルながら、ダイナミックレンジは豊かで、迫力にも事欠きません。「秋」の第2楽章の酒酔いの心地よさと心地悪さが同居した酩酊感、「冬」第1楽章のたたきつけるような和音、「春」第1楽章の各楽器で細やかに変化が付けられた鳥の鳴き声の表現、「夏」第3楽章の雷鳴とどろく嵐の表現など、各協奏曲の速い楽章での躍動感あるフレージングと鋭いアクセントによる大胆な表現と緩やかな楽章での細部にまで手を加えた繊細な表現の対比が大変面白く、聴き進めていくと、これが自然に感じ取れるようになっていくから不思議です。いまや、ここまでこだわった表現さえ自然に聴こえるように演奏できてしまうのですから、第一級の古楽演奏のはるか高みにある現在地をまざまざと見せつけられているように思えてきます。
 またアルバムの真ん中に配置されたヴァイオリンとの二重唱のようなオペラ・アリアでは、今注目を集める若きカウンターテナー、ポール=アントワーヌ・ベノス=ディアンがその美声と豊かな表現力を思う存分披露、その実力のほどを知らしめています。
 アルバムの最後は、ヴィヴァルディの出版第1弾となった「12のトリオ・ソナタ」作品1(1703年)の終曲「ラ・フォリア」。1700年に出版されたコレッリの「ヴァイオリン・ソナタ集」を踏襲するかのように曲集の末尾を飾る12曲目を「ラ・フォリア」の変奏曲にしているのですが、コレッリの曲はヴァイオリン独奏ですが、こちらは3声部のソナタなので、ヴァイオリン同士の、特に通奏低音まで加えた丁々発止の掛け合いが特徴的です。「ラ・フォリア」は狂気や熱狂、常軌を逸したという意味ですが、まさにタイトル通り聴いているだけで胸が躍る「カッコイイ」曲です。ショーヴァンをはじめとするル・コンセール・ド・ラ・ロージュの面々の圧倒的技巧を聴き手に堪能させて締めくくられます。最初から最後まで実に濃密な内容のアルバムとなっているのです。
 「四季」はもういいよ、と思っている方にこそ、ぜひとも試していただきたい鮮烈な「四季」です。(須田)

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