アーティスト特集~フランチェスコ・コルティ~『ヘンデル:8つのチェンバロ組曲、序曲編曲集』

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『ヘンデル:8つのチェンバロ組曲、序曲編曲集』

ヘンデル:
「八つの組曲」(1720)HWV426~433
序曲~歌劇「ロデリンダ」HWV19より
序曲~歌劇「忠実な羊飼い」HWV8より
序曲~歌劇「ラダミスト」HWV12より
序曲~歌劇「テーゼオ」HWV9より
ウィリアム・ベイブル:
第1組曲ヘ長調(抜粋)
プレリュード、序曲~ヘンデルの歌劇「リナルド」HWV7より、「泣かせてください」~ヘンデルの歌劇「リナルド」HWV7より
フランチェスコ・コルティ(チェンバロ)

ARCANA NYCX10285(2CD)
輸入盤国内仕様

 今、最も注目を浴びるチェンバロ奏者の一人である、フランチェスコ・コルティによるヘンデルのチェンバロ組曲集。収録曲は有名な「八つの組曲」(1720年)に加えて、チェンバロ独奏編曲による歌劇の序曲集となっています。
 ヘンデルのチェンバロのための組曲は、まとまった形以上に、その中から抜粋された特定の曲(サラバンドやパッサカリアなど)が、特に現代的なアレンジを加えられて単独で演奏されることの方が多いようですが、まとまった形での録音では、組曲それぞれの構成を知ることができ、単独で有名な楽曲が元はどのように収められていたのかを聴くことができます。特に優れた演奏で聴けば、ヘンデルがヨーロッパ各国の音楽からどのように影響を受け、それを自らの音楽に生かしていったのかがよく分かります。1720年と言えば、すでにヘンデルは高い名声を誇る当時を代表する作曲家の一人として受け入れられていた時期ですから、この組曲集がヘンデルにとって満を持したもの、当時の音楽愛好家たちによって待ちに待ったものであったことは疑う余地がありません。今ではヘンデルはオペラやオラトリオなど声楽作品が取り上げられることが多く、器楽作品でも「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」などの大規模な作品の作曲のイメージが強いのですが、当時から鍵盤の名手として強調されるほど認識されていて、まさにヘンデルのチェンバロのための作品集は、当時の音楽愛好家にとって垂涎の作品集だったのです。
 フランチェスコ・コルティによるこの録音は2021年ですが、この前年に、実力派歌手二人を迎え、コルティはイル・ポモ・ドーロとともにヘンデルの初期のカンタータを録音しています。そうしたことで、ヘンデルへの興味を増し、この組曲の録音につながったのかもしれません。コルティのこの作品への深い見識と演奏への思いは、ブックレットの自身の手による詳細な解説に記されています。即興的装飾の挿入の仕方を作品の個性により変え、ヘンデルのチェンバロ作品の魅力を引き出したその演奏は、さまざまな資料から得られる情報や過去の名手たちによる演奏からを丹念に参考に、絶え間ない研究をしていきたコルティだからこそ成し得る圧倒的な説得力を持っています。ヘンデルのチェンバロ組曲集の代表的演奏となることは間違いないでしょう。またヘンデルのオペラ序曲のチェンバロ独奏編曲版、同時代のイギリスの作曲家ベイブルによるヘンデルの有名なオペラ・アリア「私を泣かせてください」のチェンバロ独奏版など、カップリングの楽曲も魅力満載です。

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