アーティスト特集~バンジャマン・アラール~『17~18世紀のフランスの音楽』

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『17~18世紀のフランスの音楽』

ジュアン・ティトゥルーズ:賛歌《アヴェ・マリス・ステラ》
ジャック・ボワヴァン:第7旋法による組曲
フランソワ・クープラン(アラール編):4声のソナタ《スルタン妃》
マルカントワーヌ・シャルパンティエ:イエズス会のサルヴェ・レジナH.27
ジャン・マリー・ルクレール:3声のソナタ 第8番
ジャン=フランソワ・ラルエット:秘跡のためのモテット、王のためのモテット
【演奏】
バンジャマン・アラール(オルガン)
トーマス・ファン・エッセン(バリトン)
ジュリアン・レオナール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
マリー・ルキエ(ヴァイオリン)

録音:2009年4月

HORTUS HORTUS076 
輸入盤 

 バンジャマン・アラールがHORTUSレーベルに2009年に録音した17~18世紀のフランス・オルガン音楽集。バッハの録音が多いアラールにとって珍しい録音レパートリーとなります。フランス、ポントードゥメールにあるサントゥアン教会の宗教改革以前の様式で製作されたオルガンを使用しています。フランス・ルネサンス後期のオルガンの巨匠ティトルーズの賛歌「アヴェ・マリス・ステラ」からはじまり、ジャック・ボワヴァンの組曲、アラール自身がオルガン編曲したクープランのクラヴサン曲「スルタン妃」など、100年に渡るフランス音楽をオルガンで聴かせ、続けてシャルパンティエの「イエズス会のためのサルヴェ・レジナ」ではターユ(バリトンの音域またはその音域の歌手を指すフランス語)との共演、ルクレールのソナタではヴァイオリンとヴィオラ・ダ・ガンバとの共演で、そしてリュリの弟子であったヴァイオリン奏者で作曲家のジャン=フランソワ・ラルエットのプティ・モテ2曲では再びターユと共演しています。アラールのオルガンの腕は冴え渡り、フランス音楽の独特の魅力を的確に私たち聴き手に伝えています。冒頭に配置された3曲の時代や作曲家自身の個性による違いの描き分けは見事というほかありません。特にクープランでは、アラールがオルガンへの編曲の腕も一流であることを示してるのです。声との共演では歌を支えつつも伴奏に終始するのではなく、巧みなストップの使用によって色彩感を変化させ、積極的にその音楽の持つオルガン音楽的側面を打ち出しています。ルクレールのソナタでは、ヴァイオリンとヴィオラ・ダ・ガンバとの優雅な3声部を織りなしています。明暗、メリハリなど、とにかく変化の付け方が絶妙で、とても20代の若者の演奏とは思えないほどの完成度なのです。それでいて変な老成感はなく、実に溌溂とした生命力を感じさせてくれるのですから、一向に聴き飽きません。決してメジャーではないこうしたフランス・バロックのオルガン(またはオルガンを伴う)音楽をこうまでじっくりと聴かせてしまうアラールのすごさを思い知る1枚です。

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