アーティスト特集~バンジャマン・アラール~『J.S.バッハ:鍵盤作品全集Vol.4~ヴェネツィア風、イタリア様式による協奏曲』

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『J.S.バッハ:鍵盤作品全集Vol.4~ヴェネツィア風、イタリア様式による協奏曲』

[CD1]
1.協奏曲 ト長調 BWV 973(原曲:ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲 ト長調 RV 299)
2.協奏曲 ト短調BWV 975(原曲:ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲 ト短調 RV 316)
3.協奏曲 ロ短調 BWV 979(原曲:トレッリのヴァイオリン協奏曲)
4.協奏曲 ニ長調 BWV 972(原曲:ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 RV 230)
5.幻想曲とフーガ イ短調 BWV 944
6.協奏曲 ニ短調 BWV 974(原曲:マルチェッロのオーボエ協奏曲 ニ短調 S.Z799)
7.前奏曲とフーガ イ短調 BWV 894
8.協奏曲 ト長調 BWV 980(原曲:ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 RV 381)

バンジャマン・アラール
チェンバロ(マッティア・デ・ガンド制作(1702年、ローマ)、グラツィアーノ・バンディーニ修復(2016年、ボローニャ))
録音:2020年6月28-30日/サンタ・カテリーナ博物館、トレヴィーゾ(イタリア)

harmonia mundi KKC6328(3CD) 
輸入盤国内仕様

 あまりにもすばらしいバッハの鍵盤作品全集を粛々と進める若き天才鍵盤奏者、バンジャマン・アラールの全集シリーズ第4集。今回のテーマはイタリアで、当時の最先端の音楽だったイタリア、ヴェネツィアの音楽から影響を受けたバッハの30代の頃の作品を集めています。これまでのシリーズにおいて、アラールは、バッハに影響を与えたバッハ以外の作曲家の作品も加えて、バッハの鍵盤作品を多角的に捉えるプログラムを組んできましたが、第4集は、バッハの作品だけで構成しています。その理由は、収録曲のほとんどが同時代のヴェネツィアで活躍したイタリアの作曲家たちの協奏曲の鍵盤独奏用編曲作品だからです。バッハはヴァイマール時代、若き公子ヨハン・エルンストから依頼され、公子がオランダから持ち帰った、ヴィヴァルディやマルチェッロ、トレッリといった当時のヴェネツィアで活躍していた作曲家たちの最先端の協奏曲の楽譜を鍵盤独奏用に編曲していました。その過程でバッハは、当時の最先端の音楽様式を学び、自らの作曲に取り入れていったのです。アラールはそうした作品を、チェンバロ、オルガンだけでなく、足踏み鍵盤の付いたペダル・チェンバロも用いて演奏。一台の鍵盤楽器から合奏にも引けを取らないほどの豊穣な響きを引き出し、編曲作品としてバッハのオリジナルよりも一段低く評価されがちなこれらの鍵盤独奏協奏曲の真価を聴かせてくれます。ヴァイオリン協奏曲やオーボエ協奏曲といった原曲を見事にアレンジし、鍵盤独奏用に仕立て上げるバッハの編曲の妙技を堪能させてくれるのです。特に通常はオルガン独奏で演奏されるBWV592や594といった作品をペダル・チェンバロで奏でるその演奏のスケールの大きさには驚かされます。しばしば加えられるセンス抜群の即興的装飾も流石!またチェンバロは1702年にイタリアで作られたオリジナルを使用し、オルガンはストラスブールの修道院にあるジルバーマン・オルガンを使用と、ペダル・チェンバロ以外の楽器もすばらしい楽器です。楽器の性能を最大限引き出すアラールの凄さには脱帽する他ありません。このバッハの鍵盤作品全集が完成した暁には、バッハ作品録音史に金字塔を打ち立てることになるでしょう。

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